きれいに剥がれる
窓際のテーブルで
豆腐パックから
割引シールを剥がしている。
爪でシールの端をそっと持ち上げて
クロムハーツのライターで
裏から温める。
粘着剤が緩んだところで
ゆっくり引く。
チリッ、という音がして
シールがきれいに剥がれた。
三列目

テーブルの上には
飲みかけのぬるいコーラ。
その横に開いたノートが置いてある。
A5サイズの見開きに
20%OFFのシールが
等間隔で並んでいる。
今日で三列目
男は剥がしたシールを
ノートの端に貼る。
指先で空気を抜くようにそっと撫でる。
爪の間には
落としきれない黒い汚れが入っている。
西日の油膜
換気扇の油汚れが
西日に照らされて、鈍く光る。
窓枠に並んだ多肉植物のうち
端の一つが茶色く萎れている。
次は鶏胸肉のパック。
今度のシールは二枚重ね。
男はライターを持ち直す。
冷蔵庫のコンプレッサーが止まり
部屋が静かになった。
遠くでバイクの排気音が鳴り響く。
チリッ

キッチンの隅に
輪ゴムでまとめられたライブハウスのチケット
その隣には、区役所から届いた封筒
どちらも開封しないまま置かれている。
男はシールの端を爪で起こす。
一枚目が剥がれる。
二枚目も同じ手順で。
ライターの炎が
シールの裏側を舐める。
チリッ
綺麗に剥がれたシールを
光に透かして見る。
粘着剤の跡が薄く残っている。
男はそれをノートに貼り
指先でそっと撫でる。
着古したレザージャケットの袖が
テーブルの縁に引っかかる。
窓の外で、別のバイクが通り過ぎる。
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